三個の赤いランドセル
衣替えの時期です。
押入れを開けると 古びた赤いランドセルが三個 顔を出します。
三人の娘達が小学校一年生から六年生までずっと使っていたランドセルです。
長女が小学校を卒業する時に このランドセルをどうしようか 随分悩みました。
処分する勇気が ありませんでした。
迷った挙句 このランドセルに思い出を詰めて いつか娘達がお嫁に行くときに
持たせてあげようと思いました。
母子手帳をはじめ育児日記・保育園の連絡ノート・小学校の連絡簿・子供達の日記帳・作文・絵画そして子供が嫌がるだろうなと思いながらも 成績表もいれてあります。
それぞれ三個の赤いランドセルはこうして出番が来るまで押入れの中で待っています。
毎年 このシーズンになると 衣替えの手を休め 何かしらなつかしくランドセルを開けて
子供達の作文を読んだりすると 遠い昔が目の前に甦ってきます。なんと言っても 手がかかる子供達とワイワイ言いながら過ごしていた頃が 人生の中でも一番いい時期だったのかもしれません。
昨年の三月に長女がお嫁に行きました。
その時のためにしまっておいたこのランドセルですが とうとう渡すことができませんでした。
思い出が詰まったこのランドセルを 渡してしまえば 娘との縁が切れそうな そんな気がしたのだと思います。
でも娘のためのランドセルです。今度赤ちゃん誕生の報告を受けた時に 改めて渡そうと心に決めています。子育てになんらかの形で役に立って 私達の思いも伝わるのではないかと思っています。
その日が来るのが待ち遠しいような
来て欲しくないような・・・・・・弱い母です。