「 俺 癌になってよかったよ」

ある夫婦のお話です。

子供さんが三人おられる夫婦ですから それなりの愛情をもって一緒になられたのだと

思いますが ご主人の性格からか もう長い事家庭から笑い声が 聞こえる事はなかったそうです。夫婦の間もあまり会話もかわすこともなく それでも離婚は全く考えられなかったと 奥さんは話してくれました。このままの生活がずっと続いていくのだなと 我慢していれば 私が仕えていけばいいのだからと 自分に言い聞かせてきたそうです。

子供さんたちは もうみんな社会人で お母さんに離婚を勧めてきたそうですが

離婚をするエネルギーもなかったのがよかったのか 別れられなかったと。



そんな中 昨年ご主人に癌がみつかり 一度手術はしたものの 再発して

12月には あと半年でしょうと 医師から二人に告知があったとのこと。

先週まで抗がん剤の治療を続けてきたけど それももう止めて 自宅でしばらく静養した後 ホスピスにお世話になるつもりと涙ながらに話してくれました。



でもこんな家庭 こんな夫婦だったけど 癌の診断が下った時から 本当に自然に ごく普通の家庭に戻ることができて良かった。

それをご主人も察してか「俺 癌になってよかったよ」と言われたとのこと。



病院から退院する日は雨。ふたりで肩を寄せ合ってひとつの傘で 駐車場までのわずかな距離を歩きながら ご主人が奥さんの肩においた手の感触を

「おまえ 相変わらず 太ってるね」とぽつり言われて

何年もの長い間のわだかまりが すっと無くなったしまったと言っていました。



奥さんは 職場に長期休暇を申し出て これからずっとご主人のそばにいてあげるそうです。病気は辛いことだけど いい夫婦に戻れたのが 最後の思い出になることになってご主人も 静かに日々をおくられているそうです。





仕事を通じてつきあいのある知人の話だったのですが 

夫婦の絆って・・・・

考えさせられました。